| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-074  (Poster presentation)

個体内花間で花サイズがばらつくのはどのような植物か?花形態と個体サイズによる違い
Variation in resource availability among flowers: effects of floral symmetry and plant size

*板垣智之(東北大・院・生命), 望月潤(東北大・院・生命), 青柳優太(東北大・院・生命, 九州大), 酒井聡樹(東北大・院・生命)
*Tomoyuki ITAGAKI(Tohoku Univ.), Jun MOCHIZUKI(Tohoku Univ.), Yuta AOYAGI BLUE(Tohoku Univ., Kyusyu Univ.), Satoki SAKAI(Tohoku Univ.)

個体内に複数の花を咲かせる植物において、個体内花間で花あたり資源量のバラつきが知られている。多くの植物で、個体・花序内で基部に近い花ほど、あるいは、開花が早い花ほど花サイズが大きく、花粉・胚珠数が多くなる傾向が報告されている。一方で、どのような植物にこのような花間バラつきがあり、あるいはないのか、一般的な傾向は知られていない。放射相称花に比べ、左右相称花は種内で花サイズばらつきが小さい傾向が知られている。左右相称花は、個体内花間の花サイズ・花あたり資源量のばらつきも小さいのではないか?また、資源を多く持つ個体は、個体内の花数が多く、その結果個体内花間のばらつきが大きくなるのではないだろうか?

本研究は複数の草本種を材料に、個体内の複数の花の花サイズ・胚珠数と、それらの個体内花間平均・バラつき、さらに個体サイズを調べた。花サイズと個体サイズの関係は28種で得られ、左右相称花12種と放射相称花16種との間で、また管状花15種と皿状花13種との間で比較した。花あたり胚珠数は24種で得られ、左右相称花10種と放射相称花14種で、また管状花12種と皿状花12種の間でそれぞれ系統関係を考慮して比較した。

その結果、管状花に比べ、皿状花では個体サイズが大きいほど花サイズのばらつきが大きくなる傾向があった。胚珠数には花形態の効果は見られなかった。また、平均花サイズ・胚珠数はともに個体サイズと緩やかな正の相関があったが、花形態の効果は見られなかった。これらの結果は、大きな個体は大きな花・多数の胚珠を作る一方で、皿状の花を作る植物は花間花サイズバラつきが大きく、管状の花を作る植物は花間花サイズバラつきが小さい傾向があることを示唆している。皿状の花に比べ、管状の花は少数の送粉者タイプが訪花するため、花サイズの大きさが個体内でばらつかない方向への淘汰が起きているのではないか。


日本生態学会