| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-076 (Poster presentation)
植物の性表現は多様性に富み、個体単位の性表現では全種子植物のうち90%以上は個体が雌雄性(性染色体)を持たず、何らかの環境要因あるいは発達の過程によって個々の花の性が決定する。動物における性決定では環境依存的な性決定(environmental sex determination; ESD 例:温度、日長等)機構とその適応的意義について研究が進んでいる。一方、植物におけるESDについては、古くからその現象については報告されているがどのようにして温度、日長、栄養状態等の複数の環境因子が性決定に作用するのか明らかになっていない。ESDのメカニズムの解明は、植物の適応度の指標であり分布にも直接的に影響する種子生産量の評価に不可欠であるが、多くのこれまでの研究では生育条件が管理される園芸作物を対象としており、野外に生育する植物種についてはほとんど明らかになっていない。そこで本研究では一個体内に両性花と雄花を持つ雄性両全性同株ケツユクサ(Commelina communis f. ciliata)を用いて、日長と栄養状態が個花の性表現決定に与える影響について明らかにすることを目的とした。
実験は全て、花序内で最初に咲く両性花(以後B1)が受精し子房が発達途上にある状況下での二番目に咲く花(以後B2)の性表現に着目して行った。長日条件下ではB2は雄花となったが、短日条件下ではB2は両性花となる傾向があった。短日条件と高栄養塩環境とを組み合わせるとより明確にB2は両性花となった。短日条件の連続した暗期を光中断処理した場合、B2は雄花となった。また、短日条件下では長日条件と比較して期間あたりの花数が増加し、花期が短くなった。これらのことから、ケツユクサにおける日長および養分環境依存的な性決定の適応的意義について検討した。