| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-079 (Poster presentation)
有用植物や希少植物などを将来にわたって適切に保護、管理するには生育域内外で多様な遺伝資源を保存することが重要である。地球温暖化や人為改変による生育地の減少・劣化が懸念されている昨今、生育域外保存の重要性が再認識されている。樹木は長命で大型のため、種子で保存することができれば、限られたスペースに多様な遺伝資源を長期的に保存することが可能となる。種子の長期保存の可否には種子の乾燥耐性が関係するが、その知見は限られている。外国樹種を用いた先行研究では、種子の形質を用いることで乾燥耐性を推定することが出来ると報告されているが(Daws et al. 2006 Ann Bot)、日本産樹木93種を用いてモデルの検証を行ったところ、誤推定される種も見られ、日本産樹木種子に即したモデルの改善が必要だと考えられた。そこで本研究では既存のモデルに使用されている種子の乾燥重量、種子全体に対する種皮の重量割合(seed coat ratio; SCR)に加え、扁平率および種子採取地の年平均気温、年降水量、最深積雪量などの気象データが乾燥耐性の有無の推定に利用可能か検証した。126種の種子形質を測定し、Kew植物園のデータベースをもとに属や科レベルで乾燥耐性を確認した。採取地が明確である43種については国土数値情報から三次メッシュ気候値を入手した。この43種の乾燥耐性の有無を目的変数とし二項分布ロジスティック回帰を行ったところ、SCRと年平均気温のみが選択された。SCRが1に近いほど、つまり種皮が厚いほど、また気温が低い地域ほど乾燥耐性を持つ傾向が見られた。今後、気象情報を追加し、さらなる検証を行う予定である。