| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-081  (Poster presentation)

絶滅危惧海浜植物ハマビシの海流散布の検証
Thalassocholy potential in Tribulus terrestris, an endangered coastal plant in Japan

*西野貴子(大阪府立大学), 高木映実(大阪府立大学), 長谷川匡弘(大阪自然史博)
*Takako NISHINO(Osaka Pref. Univ.), Emi TAKAGI(Osaka Pref. Univ.), Masahiro HASEGAWA(OMNH)

 海浜に生育する広域分布植物の中でも、木本などの大型植物における種子の海流散布の実態については、遺伝的多様性のデータなどからも裏付けが進んでいる。一方、ライフサイクルが短く、さらに波浪という撹乱の影響をより大きく受けるため、海浜の草本植物は集団の消長が激しく、木本とは異なる遺伝的多様性や種子特性があることが予想される。
  ハマビシ科ハマビシ属ハマビシTribulus terrestrisは、世界の暖温帯の海浜や内陸の砂漠に分布する一年生草本である。茎は砂上を匍匐し、直径1 cmほどの黄色い花を咲かせる。果実には鋭い刺があり、熟すと5片に分かれ、1片あたり1-3粒の種子を木質の果皮が取り囲んでいる。日本でも日当たりの良い砂地に生育し、夏から秋に開花・結実をしているが、海岸の護岸工事などによって生育地が減少し、絶滅危惧種ⅠA類に指定されている。 そこで、本研究ではハマビシの果実の散布特性からハマビシの海流散布の可否を検討し、瀬戸内海周辺に生育するハマビシ集団の遺伝的調査を行った。
 果実内部には空隙がなく、海水に浮かべたところ、72時間で9割の果実が沈んだが、SDH活性は保たれていたため、発芽能力は維持していると考えられる。また、秋に採取してから4ヶ月後の種子であっても、冷湿処理や、果皮の除去処理にかかわらず発芽は1割前後であった。種子の休眠には大きな個体差があり、マイクロハビタットの条件が整うとシードバンクからの発芽が起きていることが予想される。今後、集団の遺伝的多様性と合わせて議論を行う。


日本生態学会