| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-091  (Poster presentation)

2産地に由来するアスナロの低温順化過程における耐凍性の変化の比較
Comparison of changes in freezing tolerance during cold acclimation of Thujopsis from two provenances

*稲永路子, 遠藤圭太(林木育種センター)
*Michiko INANAGA, Keita ENDOH(Forest Tree Breeding Center)

温帯に分布する樹木などの多年生植物は、秋から冬にかけての短日条件と気温の低下に応答して低温順化し、その過程で耐凍性を増加させる。順化過程には2段階あり、段階1では秋季の低温に反応して耐凍性が徐々に上昇する。気温が氷点下に達すると段階2が開始され、耐凍性がさらに上昇する。低温順化のタイミングは生育地域の環境条件に適応しており、多くの場合緯度や標高に沿ったクラインが観察される。そこで本研究では、2産地に由来するアスナロ属個体を使用し、低温順化過程に産地間差が見られるか耐凍性試験によって調査した。材料として、林木育種センター構内(茨城県日立市)に植栽されたアスナロ属個体のうち、磐梯熱海(福島県郡山市熱海町)産および久々野(岐阜県高山市久々野町)産各4個体を使用した。調査は2018年9月から翌年4月にかけ、1ヶ月あたり1から3回の頻度で行った。耐凍性試験にはシュートを使用し、電解質漏出法によって50%の生存率を示す温度(LT50)を算出するとともに、各調査日の平均値を産地間で比較した。結果、産地間で段階1にあたる耐凍性の増加タイミングには差が見られなかった。有意ではないものの、9月から10月、および3月後半のLT50はわずかに久々野が高かった。発表では産地の環境と低温順化の結果について考察する予定である。


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