| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-098  (Poster presentation)

内生菌Phialocephala fortiniiが増強するススキのAl耐性機構
Root endophytic Phialocephala fortinii increased Al tolerance of Miscanthus sinensis

*春間俊克(原子力機構, 筑波大学・生命環境), 山路恵子(筑波大学・生命環境), 升屋勇人(森林総合研究所)
*Toshikatsu HARUMA(JAEA, Univ. of Tsukuba), Keiko YAMAJI(Univ. of Tsukuba), Hayato MASUYA(FFPRI)

ススキはAlが植物毒性を示す酸性土壌において優占することが知られており、鉱山跡地に設定した調査地においても優占していることが確認された。調査地のススキは根に2,000 mg/kg DWと高濃度のAlを蓄積しており、Al耐性を有すると考えられた。また、ススキの根からは内生菌としてPhialocephala fortiniiが高頻度で分離された。Phialocephala fortiniiは宿主植物に対しN、P、Kといった栄養元素の吸収を促進することが知られているが、Al耐性機構の増強に関する報告は少ない。植物のAl耐性機構には、植物や内生菌によるAl解毒物質(シデロフォア)の産生や、他元素による毒性緩和が報告されている。そこで本研究では、シデロフォアおよび元素濃度に注目し、P. fortiniiによるススキのAl耐性機構の増強を考察した。シデロフォア産生試験にP. fortiniiを供したところ、シデロフォアの産生は確認されなかった。次に、ススキにP. fortiniiを接種したところ、ススキ実生の生長促進が確認された。また、接種区、非接種区に関わらずススキは根に高濃度のAlを蓄積することが確認された。ススキの根はシデロフォアとしてクロロゲン酸やクエン酸、リンゴ酸を産生していたが、P. fortiniiによるススキのシデロフォアの産生促進は確認されなかった。一方、P. fortiniiは根のMg濃度を増加させることが確認された。MgはAl毒性を緩和するという報告があることから、P. fortiniiはMgの吸収促進によってススキのAl耐性機構に寄与している可能性が示唆された。以上から、ススキはクロロゲン酸やクエン酸、リンゴ酸を産生することによるAl耐性機構を有しており、P. fortiniiはMgの吸収促進によってススキのAl耐性機構を増強する可能性が示唆された。


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