| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-101  (Poster presentation)

葉の経済スペクトラムに関連したルビスコ基質特異性の種間差
The species variation of Rubisco specificity associated with leaf economic spectrum.

*松山秦(京大生態研), 坂田剛(北里大), 岡義尭(北里大), 鈴木拓也(北里大), 安元剛(北里大), 古平栄一(北里大), 中野隆志(富士山科学研究所), 関川清広(玉川大), 石田厚(京大生態研)
*Shin MATSUYAMA(CER), Tsuyoshi SAKATA(Kitasato Univ.), Yoshinori OKA(Kitasato Univ.), Takuya SUZUKI(Kitasato Univ.), Ko YASUMOTO(Kitasato Univ.), Eiichi KODAIRA(Kitasato Univ.), Takashi NAKANO(Mount Fuji Res. Inst.), Seiko SEKIKAWA(Tamagawa Univ.), Atsuhsi ISHIDA(CER)

植物種間には,いくつかの葉形質間に相関関係が存在する。例えば、光合成速度(An)が低い種は、葉面積あたりの乾重量が大きく、葉寿命は長い傾向がある。この相関関係の軸は、葉の経済スペクトラム(LES)と呼ばれ、光合成に関連するトレードオフ関係として理解されてきた(Wright et al. 2004)。また、葉寿命の長い種は、気孔コンダクタンス(gs)や、葉肉コンダクタンス(gm)が低く、蒸散による水損失は少ないが、葉内へのCO2拡散が制限されており、Anが低い(Onoda et al. 2017)傾向がある。従って、LESは、葉内へのCO2拡散を介して、光合成と水消費のトレードオフに関与していると考えられる。近年、ポット栽培植物で、CO2固定酵素ルビスコの特性(CO2への比親和性;Sc/o)に顕著な種間差が見出された(Galmés et al. 2017)。本研究の目的は、Sc/oや葉内へのCO2拡散がLESに沿って変化し、植物のトレードオフ関係のキー形質として機能しているか検証することである。
小笠原諸島父島の乾性低木林を構成する葉寿命の異なる24樹種を対象にSc/oを測定した結果、葉寿命の長い種ほどSc/oが大きい(葉寿命0.8年の葉に比べ、葉寿命が2.0年の葉では、Sc/oが約2.5倍大きい)ことがわかった。また、24種のうち同所的に生育する5樹種の、Angsgmの日変化を観測した結果、葉寿命の長い種ほど、gsgmの日中上昇が少なく、葉緑体周辺のCO2濃度は低いことがわかった。以上の結果は、葉寿命が長く、水資源を保持する種ほど、葉内にCO2を拡散しにくく、ルビスコのCO2比親和性が高いことを示している。小笠原の乾性低木林において,ルビスコのCO2比親和性は葉のトレードオフ関係のキー形質の一つとして機能していると考えられる。


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