| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-103 (Poster presentation)
中国内蒙古北部の半乾燥草原では過放牧や気候変動による水欠乏が問題となっている。さらに、最近のシミュレーションから大気汚染の拡大も懸念されている。そこで、同草原の毛鳥素沙地等に生育する主要灌木種の1つであるCaragana korshinskii(寧条)を材料として、その生長に及ぼす両要因の影響を解析した。
毛鳥素沙地の土壌粒径に近い人工培土を詰めたポット(10cm×40㎠)に幼植物を移植し、14時間明期/10時間暗期、光量子束密度:約1,500μmol/㎡/秒、気温:25/15℃(明/暗)、相対湿度:50/60%(明/暗)に設定した環境制御室内で4週間生長実験を実施した。(1)水欠乏実験:30、60、90(対照)、120mm/月に相当する灌水を2~3日毎に行った(平均水ポテンシャルは、-15.2、-6.7、-3.1、-2.6kPa)。(2)オゾン曝露実験:20~100ppbの周期的変化(平均50ppb)でオゾン曝露を行い、オゾン無曝露の植物と比較した。(3)オゾン±水欠乏実験:(1)と(2)の複合処理(4×2)を実施し、比較検討した。
(1)水ストレスの影響:水ストレスが強くなるほど本種の乾物生長は抑制された。現在の生育地環境より若干湿潤な条件が本種の生育には良いことが示唆された。(2)オゾンストレスの影響:灌水が十分な条件では、4週間の50ppbオゾン曝露は本種の生長に顕著な影響を及ぼさなかった。根の生長が若干低下したが、有意差は認められなかった。(3)オゾンと水ストレスの複合影響:30mm灌水処理ではオゾン曝露の有無と関係なく枯死葉が増加したが、60mm処理ではオゾン曝露区のみで枯死葉増加が確認された。水ストレスが強まるほど本種の乾重は低下したが、60mm処理区ではオゾンに曝露された植物の生長が無曝露植物より抑制されていた。
内蒙古の半乾燥草原では現在より水欠乏状態が若干でも進むと、オゾン曝露が拡大している地域ではC.korshinskiiの生長抑制が引き起こされる可能性が示唆された。今後、同地域の主要な灌木・草本種に対する気候変動と大気汚染との複合影響について、詳細な検討が必要であろう。