| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-104  (Poster presentation)

機械学習で探る樹木形質間の複雑な関係
A machine learning approach for complicated associations of functional traits of tree species

*饗庭正寛(総合地球環境学研究所), 黒川紘子(森林総合研究所), 小野田雄介(京都大学)
*Masahiro AIBA(RIHN), Hiroko KUROKAWA(FFPRI), Yusuke ONODA(Kyoto University)

葉の生産性に関与する形質間の強い相関(葉の経済スペクトラム)に代表される、植物の形質間の関係は、植物が取りうる戦略を規定し、また植物による生態系機能・サービスの供給パターンにも大きな影響を与えていると考えられている。
しかし、植物の形質間の関係に関する研究の多くが、二形質間の相関関係もしくはそれを集約した主成分分析によるものであり、非線形性や多形質間の関係については、ほとんど検討されてこなかった。本発表では、日本の主要樹木100種を対象に、機械学習の一種、ブースティング回帰木を用いて、繁殖器官や根の形質も含む17形質間の関係を解析し、以下の問に答える。①形質間の関係において、非線形性や多形質間の関係(交互作用)は、どの程度重要か?②多形質間の複雑な関係は系統を考慮しても残存するか?③日本の主要樹種において、比較的独立して選択可能な戦略・機能の軸は、どのようなものか?
17形質中16形質において、単形質のGLMよりも、機械学習モデルにおいて、他形質との強い関連が検出された。材密度や葉の乾重密度など一部の形質は、機械学習モデルでのみ他形質との関連が検出された。しかし、一部の葉の形質を除く多くの形質において、系統情報のみを説明変数に用いた機械学習モデルでも、形質モデルと同程度の強さの関連が見られたことから、形質の影響と系統の影響の識別は困難であることがわかった。細根の直径や花のサイズと他の形質との関係は弱く、系統的パターンの方が強かった。葉のフェノール含量や花期など一部の形質では、他形質との関係も系統的パターンも弱かった。
当日は、重要な形質間交互作用を可視化した結果や、戦略・機能の軸の独立性に関する解析結果も紹介する。


日本生態学会