| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-105 (Poster presentation)
人間活動の影響により対流圏のオゾン濃度が上昇している。オゾンは活性酸素となり植物にストレスを与えるため成長を抑制する。したがってオゾン濃度の上昇は気候変動に影響を与える要因となるため、その影響評価は喫緊の課題である。本研究ではオゾン濃度が通常大気の2倍に制御された開放型暴露施設(コントロール区およびオゾン処理区)でスギの挿し木苗を育成し、遺伝子発現への影響をRNA-Seq法により解析した。材料は遺伝的に分化したスギの3系統(ウラスギ、オモテスギ、ヤクスギ)で、当年生および一年生の針葉を採取しRNAを抽出してRNA-Seq法に供した。針葉の採取は7月上旬、8月下旬と10月下旬に行った。発現遺伝子の配列は、遺伝子の配列断片の両端から150bpずつ読み取り、各サンプルあたり4Gbの配列(リード配列)を収集した。収集したリード配列から、発現遺伝子の総体(トランスクリプトーム)を再構成し、約18万本(136 Mb)の配列(参照配列)に取りまとめた。これらの参照配列にリード配列を整列し、その本数を発現量としてカウントしてコントロール区とオゾン処理区とで発現量の異なる遺伝子(トランスクリプト)の探索を行った。その結果、有意に発現量が異なる遺伝子数は、当年生および一年生ともに8月下旬のサンプルで最も多く、それぞれ196個および116個の遺伝子の発現量に違いがあった。これらの遺伝子のうちオゾン処理区で発現が誘導された遺伝子にはヒートショックタンパク質やシャペロンのようなストレス応答に関連する遺伝子が多く見られた一方で、発現が抑制された遺伝子には細胞壁の構築に関連する遺伝子が多く見られる傾向があった。