| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-106  (Poster presentation)

小笠原乾性低木林における木部解剖学的特性と生理特性の関係 【B】
Relationship between xylem anatomy and physiological traits among drought-adapted woody species in the Bonin Islands 【B】

*河合清定(京大・生態研), 皆木寛司(京大・生態研), 中村友美(京大・生態研), 才木真太朗(森林総合研究所), 矢崎健一(森林総合研究所), 石田厚(京大・生態研)
*Kiyosada KAWAI(Kyoto Univ.), Kanji MINAGI(Kyoto Univ.), Tomomi NAKAMURA(Kyoto Univ.), Shin-Taro SAIKI(FFPRI), Kenichi YAZAKI(FFPRI), Atsushi ISHIDA(Kyoto Univ.)

木部の形態・解剖学的特性は枝や幹の通水性や耐乾燥性,養分貯蔵を通じ,樹木個体の成長や生存,分布を規定している.広葉樹の木部は木繊維,道管,柔細胞から構成されるが,これらの異なる細胞の量や質が種間でどのように関係し,機能の発現に貢献しているかはよくわかっていない.特に,柔細胞の多様性や機能については知見が不足している.

小笠原諸島父島の乾性低木林に生育する15樹種を対象に,枝木部の形態・解剖学的特性の種間変異を調べ,夏季乾燥期における木部の機能(通水および糖貯蔵)との関係を調べた.

木部の形態・解剖学的特性の種間変異は1)木口面における木繊維・柔細胞面積のトレード・オフと2)材比重と道管直径のトレード・オフの二軸によって説明された.柔細胞が多い枝を持つ種では,通水欠損率とデンプン含量は高い一方,可溶性糖含量は低かった.また,道管が大きく比重が小さい枝を持つ種は,最大通導度は高く,可溶性糖とデンプンの含量は低い傾向を示した.

以上から,木部の形態・解剖学的特性における異なるトレード・オフが材の通水・貯蔵機能ならびに生活史戦略の多様性の発現に貢献していることが示唆された.


日本生態学会