| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-113 (Poster presentation)
オゾン濃度の上昇は、気候変動に影響を及ぼす要因として、二酸化炭素濃度の上昇と伴に問題視されている。気候変動には極端現象があり、その中の一つである無降水期間の長期化による乾燥の激化が予想されている。オゾン耐性の低い樹種では気孔調節の鈍化が生じ、乾燥ストレスの感受性が高くなる可能性がある。オゾン応答の一つとして、葉に対して根へのバイオマス配分が減少する場合があるが、この応答も乾燥応答とは逆の反応であり、乾燥ストレスに不利となる可能性がある。これまでに、オゾン耐性が比較的高いスギを材料に、通常大気の2倍のオゾン濃度環境下でも成長量が低下しないことを明らかにした。本研究では、このスギのオゾン耐性の高さが、極端現象の一つである無降水期間の長期化による乾燥に対しても有効に機能するのか明らかにすることを目的とした。茨城県つくば市の森林総合研究所の苗畑に設置した開放型オゾン暴露施設内に、1年間育苗したスギ挿し木苗を植栽し、オゾン付加処理を2生育期間行った。材料には、ウラスギ系統(新潟県産;ドンデン)、オモテスギ系統(静岡県産;河津)、屋久島を産地とするスギ(屋久島)の3クローンを用いた。オゾン処理は通常大気の2倍に設定した。無降水期間の長期化による乾燥ストレスをシミュレートするために、2生育期目の8月19日から11月9日まで降雨遮断を行った。処理区は、コントロール区、乾燥区、オゾン区、オゾン+乾燥区の4つとし、各処理3基設定した。今回報告する光合成と成長応答に加えて、活性酸素消去系酵素の活性と抗酸化物質の濃度の変化、揮発性有機化合物の生成量の測定と、発現遺伝子の解析を行った。降雨遮断による土壌乾燥により乾燥区で成長量が低下したが、高オゾン下での降雨遮断では成長量の低下が見られなかった。土壌乾燥による成長量の低下が、高オゾン下で緩和される可能性が示唆された。