| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-124 (Poster presentation)
生物が利用可能な無機態窒素を反応性の低いN2に還元する過程は、窒素汚染の除去や生産性の制御という点で非常に重要だが、脱窒とともにこの過程を駆動する、嫌気性アンモニア酸化(アナモクス)に対する理解はいまだにきわめて乏しい。なぜなら、アナモクス細菌には純粋培養株が無く、質の高いゲノム情報がきわめて限定的である上に、集積バイオマスを対象とした窒素動態解析もほとんど行われていないためである。
典型的には、アナモクスはNO2-を電子受容体、NH4+を電子供与体として用いる脱窒反応(NH4++NO2−→N2+2H2O) であり、NO, NH2OH, N2H4を中間生成物とする反応であると考えられてきた。しかし、近年、一部のアナモクス細菌は既知の亜硝酸還元酵素遺伝子(nir)を保有しないこと、また、 ヒドラジン生成を担うHZSの基質として、NOを利用するものとNH2OHを利用するものがいることが明らかにされている。こうした背景から、本研究では、アナモクス代謝が多様である可能性に着目し、アナモクス集積バイオマスを対象に、15Nラベルされた基質と中間産物を用いたバッチ試験によるアナモクスおよび脱窒活性の測定と、溶存する無機態窒素の生成速度の算出を行った。また、メタゲノム解析に基づく機能ポテンシャル評価を行った。その結果、基質としてNO2-とNH4+を供給する環境で集積されたにもかかわらず、集積されているアナモクス菌群集はNO2-を直接利用できず、NOとNH2OHは直接利用できることが示唆された。また、このリアクターにおけるアナモクス活性は、incompleteな脱窒と共役することで維持されていることが類推された。