| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-125 (Poster presentation)
微生物による硝化プロセス(アンモニアを亜硝酸、硝酸へと酸化するエネルギー獲得プロセス)は、生態系内の窒素形態を変化させる重要な反応である。海洋においては、一次生産を支える栄養源の競合もしくは供給、深海での炭素固定、温暖化ガスである一酸化二窒素の生成プロセスとしても重要である。硝化は、細菌、古細菌によるアンモニア酸化と細菌による亜硝酸酸化の2つのプロセスからなると考えられていたが、近年では1細胞内でアンモニアから硝酸への酸化を行う完全硝化細菌も見つかっている他、硝化に関わる新たな系統群も発見されている。
外洋では、硝化の基質であるアンモニウムの濃度が低いにもかかわらず、アンモニア酸化を行う微生物が多くの海域において優占度高く存在していることが知られている。また、硝化は、光阻害を受けることが知られており、海洋表層では植物プランクトンとの栄養塩の競合に加え、光量が硝化活性に大きく影響していると考えられている。しかし、硝化活性に影響を与える様々な因子と硝化活性についての関係性については、未だ報告例は多くない。
本研究では、亜熱帯・亜寒帯北太平洋の表層試料を用いて、15Nラベル物質を使った活性測定実験を行い、アンモニアから亜硝酸、硝酸への硝化速度を求めた。亜熱帯・亜寒帯北太平洋では、クロロフィル極大よりも深層で硝化活性が検出され、複数の地点で、深度方向に2つの活性ピークがあることが観測された。亜寒帯では、亜熱帯よりも硝化活性が高く、尿素を基質とした場合にもアンモニアを基質とした場合に匹敵する硝化活性があった。また、硝化のうち硝酸まで酸化されている割合は、深い方に比べて浅い方の活性ピークにおいて小さかった。海洋においては、深度方向への光量、基質濃度によって、硝化を担う微生物に棲み分けが存在していることが示唆された。