| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-126 (Poster presentation)
北海道では有機物の厚く堆積した火山灰土壌が広く分布し、表層だけでなく下層の埋没腐植層にも多量の炭素が蓄積している。一般に微生物のバイオマス量・分解活性は土壌深と共に低下するが、深耕や反転耕起によって埋没腐植層が表土化されると、有機物施用や細根由来の易分解性有機物の添加によりプライミング効果が起こり、埋没腐植の分解が促進される可能性がある。プライミング効果によって埋没腐植の分解が促進されれば、難分解性有機物からの養分放出も促進されることが期待される。本研究では13C-トレーサー試験により埋没腐植土におけるプライミング効果の発現条件と養分放出量について調べた。
北海道標茶町(京大標茶区演習林)の表層および埋没腐植層から採取した土壌試料に13C標識セルロース(0.1-4.5 mg g-1)を添加・培養し、13CO2, 12CO2の放出速度を測定することにより、プライミング効果(PE)の量を求めた。また、微生物バイオマスの炭素同位体比、微生物バイオマス炭素・窒素量、無機態窒素量を測定した。
添加したセルロースは1.3-42.1%が無機化され、表層土に比べて埋没腐植土で低かった。表層土と埋没腐植土ともに正のPEが発現したが、表層土のみ培養初期に負のPEが確認された。PEの基質濃度依存性は表層土と埋没腐植土で異なり、PEを最大化するセルロース-C/MBC比は表層土より埋没腐植土で大きかった。セルロース添加による微生物バイオマスの増殖に伴い、微生物による埋没腐植からの窒素の獲得が促進されることが示唆された。
埋没腐植土では、増殖した微生物バイオマスの減少とともに無機態窒素量の増加が見られたものの、養分放出の促進効果はごく短期間であった。これは、セルロース添加区において、微生物バイオマス中に長期間に渡って相対的に多くの窒素が保持されたためである。PEに伴い微生物に獲得された窒素の放出を促すためには、添加する基質の炭素/養分比の検討が必要であると考えられた。