| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-128 (Poster presentation)
近年日本でカシノナガキクイムシにより媒介される子嚢菌Raffaelea quercivoraにより引き起こされるナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)がコナラ属樹木の大量枯死を引き起こしている。樹病等で発生した枯死木はその分解の進行に伴い大量のCO2を発生させるため、攪乱後の樹木の発生や回復とならんで、枯死木発生に伴う分解CO2放出量の把握は、動的変化を起こす森林群落のCO2吸収能の把握という面で重要な研究となる。本研究ではこのナラ枯れに着目し、ナラ枯れで枯死したコナラからのCO2放出量を広域で長期間測定することにより、同じ原因で枯死した同樹種からの分解CO2放出量の広域環境応答の評価を行い、ナラ枯れ発生に伴う森林の炭素動態の変化の推定を試みる。枯死木からのCO2放出量の測定は、簡素化と平準化のために容積約80Lのプラスティックケースをチャンバーとして用い、測定時に赤外線CO2濃度計(GMD-20:Visala社)とデータロガー(HOBO UX-120:ONSET社)および温度センサー、ファンを一体化したユニットを測定枯死木とともにチャンバー内に置き、蓋を密閉することによって枯死木からのCO2放出量の測定を行った。測定は青葉山(宮城県)、秩父(埼玉)、田無(東京)、赤津(愛知)、山城(京都府)、田野(宮崎県)で2016年より行われており直径約30cm、長さ約50cmのコナラ枯死木サンプルを4本、群落内10Plotに設置し、枯死木CO2放出量測定を年間3~4回行っている。本研究ではこれらの情報を用いて枯死木を含めた樹木リターの分解推定モデル(Yasso Model)の最適化を行い、日本のナラ枯れ発生が広域森林炭素動態に与える影響の推定を試みる。