| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-130 (Poster presentation)
コウヨウザンは中国原産の針葉樹で、成長速度が早く伐期が25年程度と短いこと、下層植生が少なく萌芽更新を行うため森林管理を省力化できること、木材も高強度であることなどから、スギやヒノキに替わる国内の造林樹種として期待されている。一方、外来種であることから生態系内の在来種への影響や、早生樹・短伐期であることから土壌養分収奪の影響が危惧されている。近年国内では成長特性や木材強度に関する研究が盛んに行われているものの、土壌への影響に関する検証例はほとんど見当たらない。一般に人工林の植栽は樹木の成長とともに土壌を酸性化すなわち土壌劣化させるが、スギではCa蓄積により酸性化を緩和する能力がある。本研究では、コウヨウザンの植栽が土壌化学特性へ与える影響を明らかにするため、はげ山化した未熟土に75年前に同所的に植栽されたコウヨウザン、スギ、ヒノキ林の土壌化学特性を調べた。各林分に4つの土壌断面を作成し、表層から深さ0-10㎝、10-20㎝、20-40㎝の土壌試料を採取した。その結果、深層土壌と比較して表層土壌に樹種特性が顕著に認められた。コウヨウザンとスギでは表層土壌のpHおよび交換性塩基の主成分であるCa、Mg、K濃度がヒノキと比較して高い傾向にあった。一方でヒノキ表層土壌の交換性Al濃度はスギ、ヒノキと比較して有意に高かった。またコウヨウザンの林床リター量は、スギの2倍、ヒノキの4倍程度であった。これらの結果から、コウヨウザン植栽75年後の土壌では、スギと同様に塩基性養分貯蔵能が高く、酸性化を緩和することが示唆された。