| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-133 (Poster presentation)
河川を介した海洋への放射性セシウムの輸送において、懸濁物質(SS)に吸着された懸濁態としての輸送が卓越している。特に、平水時と比較して河川水中のSS濃度(mg L–1)が顕著に上昇する出水時には多量の放射性セシウムが輸送されることが知られている。このことは、平水時には動いていないSS成分が出水時に可動化され、それに伴い多量の放射性セシウムが輸送されることを意味している。そこで、本発表では河川水中のSS濃度の変化に伴うセシウム137濃度(137Cs)、全炭素濃度(TC)及び安定炭素同位体組成(d13C)の変化を明らかにし、懸濁態137Csの負荷源の変化について検討した。
調査は阿武隈川水系の支流の一つである福島県川俣町及び伊達市を流れる広瀬川流域で行った。流域内に設置した4つの観測地点において、定期的に平水時の河川水を採水した。さらに、2017年9月(2回)、10月及び2018年8月、9月の合計5回の出水時採水を実施した。採水した試料(100 L)は、Csモニタリング用カートリッジフィルタに捕集し、Ge半導体検出器により河川水中の137Cs濃度(Bq L–1)を測定し、SS中の137Cs濃度(Bq kg–1)を求めた。さらに、予備試料(500 ml)中のSSをGF/F上に捕集しTC及びd13C測定に供した。
結果から、各観測地点においてSS濃度が上昇するにつれて河川水中の137Cs濃度は上昇する傾向を示した。一方で、SS濃度上昇に伴いSS中の137Cs濃度は低下する傾向を示す観測地点も存在した。TCにおいてもSS濃度の上昇に対して同様のパターンを示したことから、新たに付加されたSS成分は平水時と比較して137Cs濃度が低い無機物が主体であると推察された。発表では、SS濃度を上昇させたSS成分のTC及びd13C値の推定結果から、その特徴についても併せて検討する。