| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-138 (Poster presentation)
海底堆積物中の有機物は,懸濁物食・堆積物食の小型甲殻類や多毛類などベントスの餌料源となり,水産資源を含む大型の甲殻類や魚類に連なる食物網の基盤と考えられる.本研究では,有機物の指標として全有機物・微細藻類量・易分解性タンパク質量を選び,これらにもとづいて,本州中部太平洋岸の開放性砂浜域である鹿島灘海域と九十九里海域との海底環境の比較を行なった.
2017年・2018年の7月・9月に1回づつ,水産工学研究所調査船たか丸を使用し,両海域の水深10 m帯と水深30 m帯で各3定点,合計計12定点で海底堆積物を採取し,海底表層2 cm分を分析した.全有機物量は強熱減量で,微細藻類量はクロロフィルa量(DMF抽出,蛍光法)で,易分解性タンパク質量はBradford法によりタンパク質分解酵素添加と未添加との差から,測定した.
各測定値の平均値を,鹿島灘水深10 m帯・鹿島灘水深30 m帯・九十九里水深10 m帯・九十九里水深30 m帯の順に以下に示す.
強熱減量(%):2017年 1.4, 1.3, 2.1, 2.0. 2018年 1.3, 1.3, 2.1, 1.8.
クロロフィルa量(µg/100 cm 2):2017年 52.7, 165.7, 88.8, 140.0. 2018年 111.5, 223.7, 113.2, 136.9.
易分解性タンパク質量(µg/g):2017年 17.8, 46.2, 93.4, 56.2. 2018年 34.2, 33.7, 115.1, 57.1.
易分解性タンパク質は両年とも,鹿島灘より九十九里で多く,特に九十九里水深10 m帯で多かった.易分解性タンパク質は餌料価値を直接的に反映すると考えられる.九十九里の浅海域は,懸濁物食者・堆積物食者の餌料源が多い可能性があり,実際に底棲性魚介類の好漁場である.今後は通年のデータを得る等のデータ蓄積を行う必要がある.