| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-142 (Poster presentation)
土壌呼吸は生態系から大気へ放出される二酸化炭素の系としては最大のものであり、土壌中の環境要因や生物量によって変化するため世界各地で測定されている。一般的に土壌呼吸は土壌温度との関係で推定されることが多いが、乾燥地域では土壌水分も大きく影響を与えることが知られている。本研究では、タイの熱帯乾燥フタバガキ林における強い乾燥と火災が土壌呼吸速度に与える影響を明らかにすることを目的とした。
調査はタイ東北部のコラート高原にあるサケラート研究試験林において、2018年2月から2019年12月まで、自動開閉式の土壌呼吸測定システムを使用しておこなった。1.5 ha の調査区内のコントロール区と火災区にそれぞれ5つのチャンバーを設置し、1時間に1回5分間の測定を全てのチャンバーにおいておこなった。また、火災区においては2018年12月と2019年12月に人工火災実験をおこない、火災実験後に土壌呼吸速度の測定を再開した。
乾季の土壌呼吸速度の日変化は主に地温の変動に影響を受けているが、降雨に伴う土壌水分の急激な上昇によって土壌呼吸速度も大きく上昇する現象が認められた。これは土壌水分の増加によって土壌微生物活性が高まったことが考えられた。また、2018年12月の火災実験後の地温は、火災前よりも日中の上昇が大きくなったが、土壌呼吸速度は火災前よりも若干の低下が認められた。これは火災によって地上部の草本植物が消失して根の活性が低下したこと、土壌の乾燥により土壌微生物活性も低下したことによる影響が考えられた。