| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-143 (Poster presentation)
小笠原諸島西之島は、最も近い父島から約130km西にある無人島であり、人間活動の影響を受けにくい。この島は、2013年から2017年の活発な火山活動による新たな溶岩が、それ以前から存在していた旧西之島(以下、旧島)の大部分を飲み込んだ。今日の西之島は以前の約10倍の面積となり、かつごく僅かに残存する旧島部分以外は新しくできた溶岩(以下、新溶岩台地)が大部分を占める状態となっている。そのため、西之島の大部分を占める新溶岩台地は、海鳥など一部の生物を除いて生物が殆ど存在しておらず、生態系の初期形成過程を理解する絶好のフィールドとなっている。西之島における生態系の初期形成過程の理解を目的として、2019年に環境省による令和元年度西之島総合学術調査が実施された。本発表では、旧島と新溶岩台地上で採取された未発達土壌の微生物活性および物理化学性について報告する。
2019年9月3日から5日に、西之島旧島と形成年代の異なる二つの新溶岩台地(2014−15年噴火時および2017年噴火時に形成)に上陸し、地表面からのCO2放出速度、土壌温度、および土壌水分を計測した。また、それぞれの未発達土壌の表層0-5cmを100ml採土管を用いて採取し、そのサンプルを2mmメッシュのふるいにかけた後に分析に用いた。微生物活性は、全微生物活性とβグルコシダーゼ活性、培養実験によるCO2放出速度等を計測した。物理化学性は、電気伝導度、重量含水率、pH(H2O)、全CN含有率等を計測した。
噴火後2年目の溶岩台地では、殆ど微生物活性も全C含有率もほぼゼロだったが、全N含有率は0.04%あった。一方、4年目の溶岩台地では微生物活性もみられただけでなく、全Cと全N含有率も上昇しており、未発達土壌への有機物蓄積が進んでいることが示唆された。