| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-145  (Poster presentation)

ミミズの活動が土壌からのCO2放出に与える影響
Effects of earthworm activities on CO2 emission from soil

*田中草太, 永野博彦, 安藤麻里子, 小嵐淳(原子力機構)
*Sota TANAKA, Hirohiko NAGANO, Mariko ATARASHI-ANDOH, Jun KOARASHI(JAEA)

ミミズは、土壌生態系改変者として土壌有機物の分解と土壌物理構造の改変を通して、土壌有機炭素の分解・貯蔵ならびにその結果として生じる土壌からのCO2放出に影響を及ぼしている。しかし、ミミズの活動が土壌からのCO2放出を促進するのか抑制するのかについては、相反する結果が示されており、未だに結論が得られていない。本研究では、「ミミズの活動が土壌炭素の分解・貯蔵に与える影響は、時間軸によって異なる」という仮説を検証するため、土壌から放出されるCO2と形成される土壌団粒の定量評価が可能な実験系を構築し、ミミズが土壌からのCO2放出に与える影響を短期的および長期的に評価した。ミミズを投入した実験フェーズ1(~28日)とミミズ除去後のフェーズ2(28日~)のそれぞれで土壌からのCO2放出速度を測定した結果、フェーズ1の後半(14~28日目)ではミミズ区のCO2放出速度がミミズを全く投入しなかった対照区よりも有意に高かったが、フェーズ2の後半(120~140日目)ではミミズ区のCO2放出速度が対照区よりも低くなった。また、土壌団粒の形成をミミズ区と対照区で比較すると、ミミズ区では直径2 mm以上のマクロ団粒の増加が認められた。以上より、ミミズの活動初期段階では、土壌有機物の摂食により土壌からのCO2放出が促進されるが、長期的には形成されたマクロ団粒による土壌有機炭素の隔離が生じ、CO2放出が抑制される可能性が示唆された。


日本生態学会