| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-149  (Poster presentation)

ドウガネブイブイ初齢幼虫の成長に対する個体群密度の効果は餌の種類により異なる
Population density and diet type interactively affected individual growth of an omnivorous soil-dwelling insect, Anomala cuprea

*角田智詞(信州大), 鈴木準一郎(首都大), 金子信博(福島大)
*Tomonori TSUNODA(Shinshu Univ), Jun-Ichirou SUZUKI(Tokyo Metropolitan Univ), Nobuhiro KANEKO(Fukushima Univ)

密度効果は個体群生態学における古典的な課題の一つだが、昆虫の密度が個体成長に及ぼす影響は多岐にわたっている。土壌棲昆虫はしばしば高密度で生息するため、個体群密度が高いことが個体成長に正に影響すると考えられる。そこで、ドウガネブイブイ(コガネムシ科)初齢幼虫を材料として、個体群密度の違いが成長にどのように影響するかを、異なる二種類の餌タイプで比較した。
二要因完全無作為化法に則り初齢幼虫を34日間育てた。実験の二要因は、個体群密度(カップに1匹か3匹、5匹)と餌タイプ(窒素リッチな広葉樹の葉リターか窒素プアな広葉樹の材フレーク)である。実験開始後、12日と20日、27日、34日目に幼虫の生残と生重量を記録した。
窒素リッチな餌では、個体群密度の上昇により、個体の成長は減少した。しかし、窒素プアな餌では、個体群密度の上昇により、個体の成長は増加した。生育初期には窒素リッチな餌の方が成長が良かったが、餌の違いの効果は生育27日目にはなくなった。初齢幼虫の死亡は、3匹か5匹の条件のみでみられたが、餌タイプによって死亡数はことならなかった。
窒素リッチな餌では、密度の増加により競争が生じた。一方、窒素プアな餌では、腸内共生生物が窒素獲得と成長において重要な役割を担ったと考えられる。初齢幼虫は糞を通じて腸内共生生物を獲得したため、高い個体群密度は腸内共生生物の個体間での共有を促進し、成長に影響したのだろう。自然環境下では、ドウガネブイブイ幼虫は高密度で生育し、窒素の比較的少ない根やリターを摂食している。今回の結果は、自然環境下で高密度で生息することが個体成長に正の効果を与えることを示唆している。


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