| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PB-150 (Poster presentation)
体色は捕食回避,体温調節,配偶者選択など様々な面で個体の適応度に影響し,しばしばその選択圧の方向は異なる.ある面で機能的な体色の進化が他の要素に対して影響するか明らかにすることは,体色の多様性や進化的帰結について理解を深めるうえで重要である.カワラハンミョウChaetodera laetescripta(甲虫目:ハンミョウ科)は,背景色とよく一致した隠蔽的体色が地域個体群ごとに進化したことがこれまでの研究により示唆されている.一方で,体色が体温調節や配偶者選択において重要な役割をもつことが他のハンミョウ科昆虫から知られている.カワラハンミョウは夏の高温・強日射下で地表を徘徊して捕食や配偶者探索を行う生態をもつため,その体色は捕食圧のほかに体温調節や配偶者探索に対しても重要な影響を及ぼす可能性がある.そこで本研究では明色・暗色個体群から採集したカワラハンミョウを用いて,体色と体温調節行動,配偶者選択の関係性を明らかにすることを目的として,室内行動実験を行った.輻射熱ランプ照射下で日陰に入る時間と回数を比較した結果,ランプ照射時で日陰に入る時間や回数は増加したが,体色間でそれらに違いは見られなかった.また,明色・暗色の背景色条件下でどちらの体色の配偶者が選択されるか比較した結果,異なる背景色間・体色間で選択される回数に違いは見られなかった.これらの結果はカワラハンミョウの体色の違いが体温調節や配偶者選択に与える影響は小さいことを示唆し,背景色との一致による捕食回避効果が重要であることを強調する.