| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-152  (Poster presentation)

マイマイガ個体群の変動要因と広域同調性
Factors of gypsy moth population fluctuation and its spatial synchrony

*小野寺賢介(北海道総研林業試), 徳田佐和子(北海道総研林業試), 和田尚之(北海道総研林業試), 東浦康友(東京薬科大学)
*Kensuke ONODERA(Hokkaido Res Org Forestry), Sawako TOKUDA(Hokkaido Res Org Forestry), Hisayuki WADA(Hokkaido Res Org Forestry), Yasutomo HIGASHIURA(Tokyo Univ of Pharm Life Sci)

マイマイガ個体群は定期的に大発生し、また広域で同調して個体群サイズが変動する。これまで、個体群サイズと同調に影響する要因として気温と雨量が北米で確認されている。私たちは、気温や雨量以外にもマイマイガ個体群に影響を及ぼす気象要因があると考えた。気温は多くの昆虫種に影響を及ぼしていることが予想され、マイマイガに特異的な要因とは考えにくい。フェロモンを情報伝達に利用する生物にとって、強風は通信障害を引き起こす重要な問題である。マイマイガの交尾期である8月に強風が続くと効率的な繁殖活動が阻害される可能性がある。私たちは、北海道美唄市のマイマイガ個体群の変動を卵塊カウントによって1991年から追跡してきたデータを2次の自己相関と気象要因を組み込んだ状態空間モデルで解析した。その結果、気温と風速が個体群動態に影響していることが示された。しかし、自己相関の影響に比べて気象の影響は小さかった。そこで、気温と風速が広域でどのように同調しているのか、空知、石狩、胆振地方の気象データを用いて解析した。その結果、気温はほとんどの年で強く広域同調しており同調性の年差はほとんどないが、風速の同調性は年差が激しく、数年単位で変動していることが確認された。ウェーブレット解析によってマイマイガ個体群と風速の同調性の変動を比較したところ、両者は近い周期成分を持っていることが分かったが、マイマイガ大発生との関連は不明であった。


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