| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-154  (Poster presentation)

コロニー構造は採餌行動を通じてアリ種間の薬剤ベイト感受性にどう作用するか?
The role of ants' foraging behavior based on their colony structure in determining species-specific susceptibility to fipronil baits

*瀬古祐吾(近大院・農), 一山智也(近大・農), 杉本昂玄(近大・農), 橋本洸哉(近大・農), 澤畠拓夫(近大・農), 早坂大亮(近大・農)
*Yugo SEKO(Grad Sch Agric, KINDAI Univ), Tomoya ICHIYAMA(Fac Agric, KINDAI Univ), Takahiro SUGIMOTO(Fac Agric, KINDAI Univ), Koya HASHIMOTO(Fac Agric, KINDAI Univ), Takuo SAWAHATA(Fac Agric, KINDAI Univ), Daisuke HAYASAKA(Fac Agric, KINDAI Univ)

遅効性ベイト剤は,難防除害虫の殺虫を目的に開発されたものであり,近年では生物学的侵入への対策にも広く用いられる薬剤である.しかし,その作用プロセスにはいまだ不明瞭な点が散見される.アルゼンチンアリLinepithema humileは,物資の輸送にともなう非意図的な導入により,世界中に分布を拡大する侵略的なアリ類の一種である.本種は多女王かつ多巣(unicoloniality)という特異なコロニー(女王を中心とする血縁集団)構造を有する.Inoue et al.(2015)は,日本に侵入した本種の根絶に向け,フィプロニルベイト剤を利用した防除指針を提案した.その結果,局所地域(東京湾)での根絶に成功した(Sakamoto et al. 2017).一方で,個体レベルでは本種と同等のフィプロニル感受性を示す在来アリ類が(Hayasaka et al. 2015),ベイト剤設置後でも種数・個体数を維持もしくは増加するなど,想定外の現象が確認された.しかしながら、現時点でこの現象のメカニズムは不明瞭である.そこで本研究では,コロニー構造の違いによって,アリ類の採餌戦略が異なるということに着目し,コロニー構造の違いがアリ類コロニーの採餌能力を通じ,コロニーの薬剤曝露へ及ぼす影響を解明することを目的とした.本発表では特に, 1)野外環境下でのフィプロニルベイト剤に対するアルゼンチンアリの特異な薬剤応答現象の再検証,および2)アルゼンチンアリと他のアリ類に対する資源探索・獲得能力の差異,について,これまで得られた結果を紹介する.


日本生態学会