| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PB-156 (Poster presentation)
砂礫河原には、カワラバッタやカワラハハコなどの砂礫環境特有の生物が生息している。これまで砂礫河原は、河川の攪乱により植生の発達が抑制され、また上流からの土砂供給により保たれてきた。しかし近年、河川の治水事業や護岸工事等により氾濫規模・頻度は減少し、安定化した環境では植生の遷移が進み、砂礫河原で植生の遷移が進んでいる。そのため植生が疎らな砂礫河原が消滅し、砂礫性生物が絶滅に追い込まれている。本研究では滋賀県東部を流れる愛知川の紅葉橋付近(上流、河口から約27km、調査面積:約4030㎡)と八千代橋付近(中流、約20km、約2835㎡)にある砂礫河原を調査地とし、カワラバッタとその生息環境との関係性を解明することを目的とした。
調査は2019年8月~11月にかけて月に一度、カワラバッタの個体数調査と植生調査、砂礫粒径組成調査を行なった。
2調査地共にカワラバッタは8月から11月まで確認ができた。カワラバッタの平均個体数密度(/a)は、0.35と0.4であり両地点間に有意な差は見られなかった。一方砂礫粒径の頻度分布は、紅葉橋と八千代橋で有意な差が見られた。よってカワラバッタは8~64mmの大きめの中礫が占める環境であれば生息が可能であることが分かった。また八千代橋の調査地(砂礫地)に隣接し、草地化している地点の粒度分布を調べた結果、ほとんどが細礫以下のサイズであった。平均植被率を比較した結果、砂礫組成と同様に紅葉橋(18.5%)と八千代橋の砂礫地(15.4%)との間には有意な差は見られなかったが、八千代橋の草地(48.2%)と2地点との間に有意な差が見られた。
これらのことからカワラバッタの生息環境となる一定の粒径(中礫:8~64mm)の砂礫河原が保たれる程度の攪乱や土砂動態が、愛知川で発生していると考えられる。しかし、砂礫性植物の生育環境とカワラバッタの生息環境が異なるかどうか、明確なことは分からなかったため、今後検証が必要である。