| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-157  (Poster presentation)

都市近郊における孤立林面積の違いがアカネズミの遺伝的多様性に及ぼす影響
Effects of the differences in the fragmented forest area in the suburbs on genetic diversity of Apodemus speciosus

*小海佑樹(龍谷大・院・理工), 横田岳人(龍谷大・理工)
*Yuki KOUMI(Ryukoku Univ. Graduate School), Taketo YOKOTA(Ryukoku Univ.)

 生息地の分断化や縮小は、遺伝的多様性の減少をもたらす。遺伝的多様性の減少は、近親交配による繁殖適応度の低下をともなう。個体群サイズが大きい場合には遺伝的多様性は維持できるが、孤立した小さな個体群では局所的絶滅のリスクが高まる。アカネズミ(Apodemus speciosus)は、繫殖が年に1、2回行われるため世代交代が早く、遺伝的劣化の影響を受けやすい。また、飛翔性あるいは大型哺乳類と比較して分散能力が低く、一度孤立すると他の個体群との交流が回復することは困難である。アカネズミ個体群の遺伝的多様性を評価したこれまでの研究から、高速道路、市街地、大学施設などの人為的建造物が遺伝的な影響を与えることが示唆されている。しかし、これまで、孤立林面積に着目した研究は見られない。小型哺乳類の遺伝的多様性を保全できるのか検討する上で、孤立林面積に着目することは、重要だと考えられる。そこで、孤立林面積の異なる3つの個体群における、アカネズミの遺伝的多様性を評価することを目的とした。
 調査は、滋賀県の瀬田丘陵におけるA:約269ha、B:約35ha、C:約3.1haの3つの面積が異なる孤立林で行った。2015年5月から2019年1月にかけて、捕獲罠でアカネズミを捕獲し背中の体毛を採取した。毛根から直接PCR法によって、ミトコンドリアDNAのD-loop領域を増幅して塩基配列を決定した。個体群内の遺伝的多様性の指標であるハプロタイプ多様度(h)、ヌクレオチド多様度(π)と、個体群間の遺伝的分化指数であるFstを算出した。
 結果として、合計92個体(A:31個体、B:32個体、C:29個体)から、20種類のハプロタイプを確認した。遺伝的多様性の指標であるhは、A:0.895、B:0.764、C:0.837、πは、A:0.0238、B:0.0279、C:0.0283であった。遺伝的分化指数であるFstは、AB間で0.171、AC間で0.083、BC間で0.106であった。
 本発表では、孤立林面積の違いが、アカネズミの遺伝的多様性に及ぼす影響について検討する。


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