| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-158  (Poster presentation)

河川魚類の個体群動態に対する出水イベントの直接および間接効果 【B】
Direct and indirect effects of flood events on dynamics of stream fish populations 【B】

*中川光(京都大学)
*Hikaru NAKAGAWA(Kyoto University)

河川の生物に対して、洪水による撹乱は、個体の死亡や移出による個体群密度の低下をもたらす。さらに、洪水に伴う物理環境の変化(特定の微生息場所の増減)も、各生物種の生息場所の選好性に応じて、個体群密度の増減をもたらす。そのため、ある洪水撹乱後の河川生物の個体群動態は、上記のような直接・間接プロセス双方の影響によって決定されると考えられる。しかし多くの先行研究では、撹乱後の個体の直接の死亡・移出と物理環境の変化の影響を個別に検討しており、同時に起こっているそれら2つのプロセスが各構成種にどのように作用して群集構造を決定するのかについて、詳細な検討はできていない。本研究では、京都府由良川上流の魚類15種と生息環境の13年間のモニタリングデータをもとに、魚類の観察個体数に対する季節ごとの撹乱(出水規模)の直接的な影響と生息環境の変化を介した間接的な影響を想定した状態空間モデルへの当てはめにより検討した。その結果、調査地では生息環境の季節的な変化に対して洪水撹乱の規模の増加はその変化を増幅する傾向が見られた。魚類の観察個体数については、複数の魚種に共通して夏から秋の台風による洪水が直接的に個体数の減少を生じる傾向が検出される一方、生息環境の変化を介した影響は、同じ環境要因であっても、種によって増加・減少の反応の仕方が異なっていた。これらの結果から、調査地における魚類群集への洪水撹乱の影響としては、全体的な魚類の生息密度に対しては直接的プロセスが、種組成の変化に対しては間接的なプロセスが作用した結果として群集全体の動態が決定されていると考えられる。


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