| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-159  (Poster presentation)

佐賀平野におけるトンボ個体群の減少に影響を及ぼす環境要因. 【B】
Environmental factors affecting dragonfly declines in the Saga Plain. 【B】

*Yutaro OBA(Saga Univ.), Yuhei TAZUNOKI(Saga Univ.), Hiroki OISHI(Saga Univ.), Kosuke NAKANISHI(NIES), Takehiko HAYASHI(NIES), Makihiko IKEGAMI(NIES), Koichi GOKA(NIES), Makoto TOKUDA(Saga Univ.)

 ネオニコチノイド系やフェニルピラゾール系などの浸透移行性殺虫剤による生態系への悪影響が世界各地で指摘されている。国内においては,里山生態系の象徴であるトンボ類に対する負の影響が報告されており,全国的なトンボ類の衰亡にこれらの農薬が関与している恐れがある。加えて、実際の圃場では除草剤など様々な薬剤が使用されており、それらが間接的に作用している可能性や、圃場整備や河川改修などの生息地改変や、様々な環境要因が複合的に影響している可能性もあり、殺虫剤とトンボ類の衰亡との因果関係を推察するためには、こうした要因の影響も考慮する必要がある。本研究では2017年から2019年にかけて、佐賀平野のクリーク(農業用水路)やため池を含む10地点において、トンボ成虫やヤゴの個体数調査を実施した。また、調査地おける植物(抽水、沈水、浮葉)被度や水質、底質中の農薬成分含量を測定し、周辺の土地利用状況をGISで解析した。
 地点間の環境の違いによる影響を排除するため、トンボ亜目やイトトンボ亜目の確認種数や、種ごとの確認個体数の年差分をとって解析した結果、測定した要因による有意な影響はほとんど検出されなかった。これは、年次間で調査地内における各種要因に顕著な変化が見られなかったためと考えられた。一方、種ごとの確認個体数と環境要因との相関を確認した結果、トンボ亜目では、植物被度と個体数の間に負の相関が検出される種が多かったのに対し、アカネ属のマユタテアカネでは、一部の殺虫剤濃度との間に負の相関が検出された。また、ニ化性であるアオモンイトトンボに関して、各地点の春世代と秋世代の差分および秋世代と翌春世代の差分を用いて解析した結果、いずれも一部の浸透移行性殺虫剤濃度との間に負の相関が検出された。以上より、少なくとも一部のトンボ類の衰亡には、浸透移行性殺虫剤が影響している可能性が考えられた。


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