| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-160  (Poster presentation)

立山連峰におけるミヤマモンキチョウの生息状況調査
Habitat survey of Colias palaeno sugitanii in Tateyama Mountain Range

*清水大輔, 山崎裕治(富山大学)
*Daisuke SHIMIZU, Yuji YAMAZAKI(Toyama Univ.)

ミヤマモンキチョウColias palaeno sugitaniiは、高山帯から亜高山帯にかけて生息する高山蝶であり、2019年の環境省レッドリストでは準絶滅危惧種(NT)に指定されている。立山連峰では、弥陀ヶ原などの高層湿原や、薬師岳などの稜線付近に生息するが、その生息数や生活環は不明であり、保護対策の実施が困難な状況となっている。そこで本研究では、ミヤマモンキチョウの保護政策立案のために基礎情報の蓄積を目的として、弥陀ヶ原地域における生息状況と生態学的特徴を調査した。本調査は、弥陀ヶ原の弘法から天狗の鼻周辺までの間(標高1600mから2100m)において、2019年6月3日から9月15日までの主に好天時に実施した。GPSを使用し、徒歩で探索しながら、周囲10m範囲内で確認したすべてのチョウ類の成虫について、その種類と場所を記録した。本調査の結果、7月17日から8月18日までの間に、ミヤマモンキチョウの成虫を延べ529個体確認した。確認地点は、1700m以上の草原地帯であり、渓谷や森林地帯では確認されなかった。草原地帯においてミヤマモンキチョウの成虫が確認された地点の斜度は、草原地帯全体の斜度や池塘のある地点の斜度と比べて有意に高かった(片側T検定,p<0.05)。これは、一般的にミヤマモンキチョウの成虫の生息場所は、高山の稜線付近や、湿原と言われているが、弥陀ヶ原においては、池塘周辺と比べて傾斜が大きく、水はけのよい草原地帯を利用していることを示唆する。また、調査範囲内におけるミヤマモンキチョウ成虫の個体数は、発生ピーク時(8月2日)において287個体から455個体までの範囲内にあると推定された。さらに、調査期間において確認した雌雄間における個体数比率および行動種別における飛行の比率は、いずれもオスにおいて高かった。これは、オスがメスよりも活発に飛行していたため、オスの発見が容易となり、オスの個体数が多く確認された要因になったことを示唆する。


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