| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-171  (Poster presentation)

河川性サケ科魚類の水温依存的な種間競争:季節変化を考慮した野外検証
Temperature-dependent competition in stream salmonids: a field test considering seasonal change

*山田太平(ひがし大雪博物資料館), 小泉逸郎(北海道大学), 中村太士(北海道大学)
*Taihei YAMADA(Higashitaisetsu Museum), Itsuro KOIZUMI(Hokkaido Univ.), Futoshi NAKAMURA(Hokkaido Univ.)

環境条件に依存して競争的優劣関係が変化する条件特異型競争は、生物群集の重要な形成要因である。北海道において、オショロコマSalvelinus malmaとアメマスS. leucomaenisが同所的に生息する河川では、上流域にオショロコマ、下流域にアメマスが分布する。既往研究では、両種間に水温依存的な種間競争が存在し、高水温ではアメマスが優位になることが実験的に示されている。しかし、野外において両種間の水温依存的な種間競争を検証した例はなく、分布パターンへの影響が不透明なままである。また、河川性サケ科魚類は季節によってハビタットシフトすることが知られている。そのため、両種間の水温依存的な優劣関係が変化することが考えられるが、季節変化はこれまで考慮されてこなかった。そこで本研究では、野外においてオショロコマとアメマスの水温依存的な種間競争について季節ごとに検証した。
 調査は2017年の7–10月に石狩川水系シーソラプチ川の9支流で行った。各支流に50 mの調査区間を 2–4箇所設置した。各調査区間において両種を採捕し、個体数を記録した。また、水温データロガーを支流ごとに1箇所設置し、1時間ごとに自動計測を行った。そして、応答変数を各種の個体数、説明変数を競争相手の密度と水温の交互作用項、オフセット項を水表面積、ランダム効果を調査月IDおよび調査支流IDとした一般化加法混合モデルにより季節(夏季:7–8月、産卵期:9–10月)ごとに解析を行った。
 解析の結果、夏季においては、オショロコマは低水温、アメマスは高水温で優位となることが示唆された。また、産卵期ではオショロコマが高水温で優位となることが示唆されたが、一方でアメマスに対する水温依存的な種間競争による影響は確認されなかった。以上より、両種の水温依存的な優劣関係が季節によって変化することが解明された。また、両種の河川縦断方向の分布パターンが水温依存的な種間競争によって一部規定されることが示唆された。


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