| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-178  (Poster presentation)

林冠ギャップによる林床個体呼吸上昇がもたらす芽生え~大木の呼吸スケーリングの収斂 【B】
Crown gap promotes an individual whole-tree respiration: a convergence of metabolic scaling from seedlings to giant trees among phylogenies 【B】

*森茂太(山形大), 黒澤陽子(山形大), 王莫非(山形大), 山路恵子(筑波大), 春間俊克(原子力機構, 筑波大), 土山紘平(筑波大), 小山耕平(帯広畜産大学)
*Shigeta MORI(Yamagata Univ.), Yoko KUROSAWA(Yamagata Univ.), Mofei WANG(Yamagata Univ.), Keiko YAMAJI(University of Tsukuba), Toshikatsu HARUMA(Japan Atomic Energy Agency, University of Tsukuba), Kohei DOYAMA(University of Tsukuba), Kohei KOYAMA(Obihiro Univ of A & VM)

  樹木個体群の動態は地上部に着目して、地上部の個体生長・枯死などのモニタリングデータから検討する。しかし、地上部の生長や光合成などは根系の栄養塩類と水の獲得に支えられているにもかかわらず、地上部と根系の相互関係に関する個体生理学的な実測研究は殆どない。こうした個体根系も含めた森林樹木の個体間相互作用はほぼ未解明のままの生態学上の課題だろう。
 個体群動態と個体生理を関連づけた検討をおこなうため、「根系/地上部への呼吸配分」が芽生え~大木でどのようにシフトするのか約1000個体で樹木個体全体の呼吸を実測した。個体サイズに対応した小~大の測定装置を準備した。個体が持ち得る呼吸の最大幅を検討するためシベリア~熱帯の「常緑と落葉樹、裸子と被子樹木」から「枯死寸前から優勢個体」まで生理的状態が多様な樹木個体をサンプリングした。
 その結果、地上部の呼吸スケーリングを落葉/常緑、裸子/被子で比較すると「両対数軸上の傾き」に有意差がなく、根系のスケーリングでは有意差が生じた。これは、地上部よりも根系の方が、系統(裸子/被子)や生活形(常緑/落葉)の制御を受けやすいためであろう。この結果、地上部と根系を合わせた個体呼吸は、裸子/被子と落葉/常緑間に有意差があった。これらは、個体全体の呼吸特性が地上部よりも根系の性質をより強く反映している結果であろう。
 さらに、個体サイズ応じた根系/地上部の呼吸配分比シフトをみると、常緑vs落葉, 被子vs裸子でやや異なっていた。また、根系/地上部の配分比のontogenetic changeには、根系成長が地上部成長を牽引して制御する傾向が見られた。今後は、こうした個体根系/地上部の対比を樹木共存機構や動態と結び付けて検討を深める必要がある。


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