| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PB-187 (Poster presentation)
アフリカ東部に位置するエチオピア北部のティグライ州は年間降水量が570 mm前後で、短い雨季と長い乾季が特徴である。また、現地の植生はAcacia etbaicaを主体とする疎林である。A. etbaicaの枝は現地の住民が薪に利用するが、成長は遅い。しかし、現地の植生においてA. etbaicaの成長を規定している立地要因については不明である。そこで、A. etbaicaの成長に関わる要因や、成長に適した立地環境を調べるために、土壌や植物体中の養分、及び共生微生物の感染状況との関係について調査を行った。本試験はティグライ州Kilte Awulaelo郡のAdizaboy流域で実施し、試験地の斜面の上部、中部、下部に20 m × 20 m のプロットをそれぞれ3カ所ずつ設定し、A. etbaicaの樹高、根元直径と樹幹投影面積を測定した。また、各プロットからA. etbaicaを6個体無作為に選択して、生育下の土壌とA. etbaicaの葉と根の養分の分析、及び根に共生する微生物の観察を行った。
試験地の土壌pHは7.7以上を示し、交換性カルシウム濃度は80 mmol kg-1を超える石灰質土壌であった。試験地のプロットの位置で比較すると、交換性カルシウム濃度は下部のプロットで有意に高い値を示した。一方、A. etbaicaの植物体中の養分濃度は、下部の葉内・根内リン濃度と、根内マグネシウム濃度が上部・中部の個体より低かった。このような傾向を示す原因の1つとして、集水域である下部のプロットはカルシウムが集積する環境であると考えられる。一般的に、過剰にカルシウムが含まれる環境ではマグネシウムは拮抗作用を生じ、リンはカルシウムと強固に結合しリン酸カルシウムとして不溶化する。その結果、低い標高のA. etbaicaはこれらの養分吸収が抑制されたと推察される。