| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-198  (Poster presentation)

マングローブ林形成に伴う根圏窒素固定細菌群集の変化 【B】
Rhizophere diazotrophic communities developing with mangrove forest formation 【B】

*下野綾子(東邦大学), 井上智美(国立環境研究所)
*Ayako SHIMONO(Toho Univ.), Tomomi INOUE(NIES)

潮間帯は潮汐変動によって有機物が流出し、そこに生育する植物は貧栄養環境にさらされていると考えられている。そこに成立するマングローブ林の重要な窒素供給プロセスと考えられているのが、根圏土壌中の細菌による窒素固定である。マングローブの成長とともに根圏土壌の窒素固定活性が高くなることから、その成長とともに細菌群集も発達すると考えられる。本研究ではヤエヤマヒルギ(Rhizophora mucronata)を対象に、森林の発達に伴って形成される窒素固定細菌の群集構造を評価した。
森林の根圏土壌・孤立木の根圏土壌・干潟の土壌からDNAを抽出し、窒素固定酵素をコードするニトロゲナーゼ遺伝子を増幅した。増幅産物の塩基配列をMiseqで解読し、ニトロゲナーゼ遺伝子のデータベースと参照し分類群を決定した。サンプル間の非類似度指数を用いて、森林・孤立木・干潟土壌の群集構造の違いをPERMANOVAで検定した。各土壌を特徴づける窒素固定細菌分類群を指標種分析により評価した。
窒素固定菌の群集構造は森林・孤立木・干潟間で有意に異なり、森林の発達とともに土壌中の窒素固定細菌の種多様性が高くなった。孤立木や森林土壌の指標種として頻度が高かったのは、植物と共生し成長を促進することが知られている好気性のリゾビウム目Bradyrhizobium属やロドスピリルム目Azospirillum属の分類群であった。また、森林土壌を特徴づける指標種として頻度が高かったのは好気性のシュードモナス科の分類群であった。本分類群は様々な有機物を分解できることから、根圏に蓄積される植物残渣や根滲出物が根圏の細菌群集の形成を促進していると考えられた。
これらの結果から、マングローブの根圏には森林の発達とともに、根圏の有機物や酸素を利用する窒素固定細菌群集が発達し、これらの固定窒素をマングローブが利用する共生関係が成立していると考えられた。


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