| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-207 (Poster presentation)
日本では阿蘇地域など生物多様性の高い大規模な半自然草地が保全対象として注目されているが、その維持管理が課題である。一方で河川堤防草地は、広大な面積で国土交通省による除草作業が毎年行われている、いわば持続可能な半自然草地である。しかし除草作業は堤体管理が目的であり、必ずしも生物多様性に配慮した管理が行われているとは言い難い。本研究では、除草頻度と時期の違いで、堤防の草本群落の種組成に起きる変化を明らかにすることを目的とした。調査地は岐阜県各務原市の木曽川右岸堤内側斜面に設定した。2008年秋から2019年秋まで、5m×5mのサイズの無刈区(A)、秋刈区(B)、春刈区(C)、春秋刈区(D)の4つの異なる処理区を設置した。それぞれの処理区で最低年2回、草刈時期の前に出現種を記録した。2011年からは、各処理区にそれぞれ1m×1mの固定調査枠を5個ずつ設置し、調査枠内で出現種の被度、および地表面での相対照度を測定、記録した。調査期間には合計117種が出現し、そのうち37種(32%)が外来種であった。処理区ごとの種数はA区が55、B区が75、C区が71、D区が89であり、年2回の除草で種数が最も多かった。除草を行わないA区で最も種数が少なく、年1回の除草を行ったB、C区はその中間の種数となった。A区では処理開始後3年目から秋にノアズキが、7年目から春にナワシロイチゴが優占し、群落内の照度が著しく低下した。相対照度を説明変数に、種数を目的変数として線型モデルによる回帰分析を行ったところ、切片が5.738(t=21.39, p<0.001)、回帰係数が9.694(t=19.17, p<0.001)となった。決定係数は0.5216であった。このことからオープンな環境ほど種多様性が高く、草刈りの頻度と種多様性との関係が示唆された。一方で外来種の出現頻度はA区でのべ21回であったのに対し、D区ではのべ328回と最も大きかった。在来種の種数を最大にしながら外来種を抑え生物多様性を保全する方策が求められる。