| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-208 (Poster presentation)
無人航空機(UAV)を用いたリモートセンシングは,これまでにない時間・空間・スペクトル分解能や,詳細な植生高,多方向からの観測結果が得られることから,精密農業などの分野における利用が広まりつつある.マルチスペクトルカメラ(MC)を搭載したUAVでは,葉面積指数やクロロフィル量と相関関係がある植生指数を求めることができるため,葉群のフェノロジーや健全度を検出できる.本発表では,MCを搭載したUAVを用いて,硫気孔に隣接する冷温帯落葉広葉樹林の優占樹種の植生指数を樹冠レベルで明らかにした結果を報告する.
硫気孔東側の冷温帯落葉広葉樹林200 m×100 mを対象にMC(観測帯:青,緑,赤,レッドエッジ,近赤外)を搭載したUAVによる観測を2019年6〜9月に毎月実施した.観測画像からオルソモザイク(空間解像度:5 cm)と植生指数の一つであるNDRE(50 cm)画像を作成した.種ごとのNDREを樹冠レベルで明らかにするために対象範囲を横断する3本のラインを設定し,その両側10 mの範囲に樹冠が接し,かつ,高木層に達した高木性樹種の種名,胸高直径,樹冠を7月に記録した.
キタゴヨウの出現頻度が最も高い一方,胸高断面積合計はブナが最大であった.キタゴヨウは硫気孔に近い西側に,ブナは東側に多く出現した.7月に得られたNDREは,ミズナラ(中央値:0.19),ミズメ(0.19),ホオノキ(0.18),キタゴヨウ(0.17),ブナ(0.17)と近い値を示した.しかし,キタゴヨウでは硫気孔に近いほどNDREが低かった.ブナでも同様の傾向が見られ,半枯れ個体は健全個体よりもNDREが低かった.樹冠の出現頻度が高かったキタゴヨウとブナにおいては,硫気孔から噴出する火山性ガスの葉群に対する影響が検出できた可能性がある.
本研究はNEDO委託業務による研究開発の一環として実施したものである.