| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-212  (Poster presentation)

白神山地ブナ天然林におけるリターフォール量の季節変化
Seasonal variations in litterfall in beech forests in Mt. Shirakami

*鳥丸猛(三重大学), 寺倉千晴(三重大学), 赤田辰治(弘前大学)
*Takeshi TORIMARU(Mie Univ.), Chiharu TERAKURA(Mie Univ.), Shinji AKADA(Hirosaki Univ.)

ブナ林は日本の冷温帯域を代表する森林タイプであり,水源涵養機能や野生生物の生息地を提供するなどの公益的機能を有する場所として重要である.森林の物質生産量は,そのような森林の機能を評価する一つの指標であり,特にリターフォール量は養分還元量や炭素収支量を推定する上で不可欠な情報であるため,その季節変化(月間や年間の差異)や立地間の差異の実態解明は保全上の重要な知見を提供すると考えられる.そこで本研究は,ブナ林のリターフォール量を2年間にわたり2箇所の調査地で測定し,その季節変化や立地間の差異に影響を及ぼす要因を解明することを目的とした.青森県白神山地に設置された二カ所の固定調査区[高倉森(標高約800m)とサンスケ沢(標高約250m)]にそれぞれ24基のリタートラップを設置し,2011年と2015年の春から秋にかけて約1か月間隔でリターを回収した.2011年のリターは葉,枝・樹皮(以下,木部),種子(堅果・殻斗含む),花,その他の5要素,2015年のリターフォールは上述の5要素に虫糞を追加した6要素に分類し,乾燥後に重量を計測した.2011年の高倉森とサンスケ沢の年あたりのリターフォールの総量は,2088.0kgと2924.8kg,2015年ではそれぞれ3694.0kgと3130.2kgであった.年あたりのリターフォールの総量,葉や木部のリターフォール量は両方の調査地で2011年よりも2015年で多かった.年あたりの花と種子のリターフォール量は2015年の高倉森で最も多かった.ブナのリターフォールの総量はサンスケ沢よりも高倉森で多く,イタヤカエデのリターフォールの総量は高倉森よりもサンスケ沢で多かった.白神山地で実施された既往の報告(2600~4800 kg)と比較すると2011年の高倉森のリターフォール量が特に少なく,当該年におけるブナの開葉時期における晩霜害が原因と考えられた.また,森林群集の優占種の組成の違いがリターフォール量と関係していることが示唆された.


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