| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-213 (Poster presentation)
樹高成長曲線は従来の曲線ではなく、繁殖が安定する時期に折れ曲がる折れ線でより当てはまることが示唆された(Suzuki et al 2019)。樹木には、成長の転換点が存在し、その前後では成長を規定する要因、延いては林分の管理方法も変わってくるのかもしれない。また、収穫期を迎えても伐採されない高齢人工林が増えている。収穫期に至るまでの管理方法は規定されているが、高齢人工林での管理方法は、基礎的知見が不足しているため、不明な点が多い。そこで本研究では、高齢人工林おける管理方法に繋がる基礎的知見として、人工林を若齢と高齢の発達段階別に分け、段階ごとの年輪幅成長に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした。
調査は兵庫県北東部に位置する68年生のヒノキ人工林0.5haで実施した。皆伐後に全個体の地上高30cm年輪幅及び直径、個体位置を測定した。年輪幅は、個体別に定めた尾根側から中心までを結んだ直線上で計測し、内部腐朽等で計測できない場合は、尾根側を0度、谷側を180度として年輪幅を計測した直線の角度(年輪幅計測角度)を記録した。個体の周辺環境として、航空レーザ測量データから斜面傾斜を、個体位置及び直径から競争指標を複数スケールで算出した。消失個体の個体位置は過去の推定本数密度を基準にランダム発生させ、直径は残存個体の平均及び標準誤差から乱数を生成し計算した。
各年の年輪幅成長量をプロットし、若齢と高齢の発達段階別に直線回帰させた傾きを応答変数、斜面傾斜、競争指標、個体位置、直径、年輪幅計測角度を説明変数としたモデルを構築し、最も説明力のあるモデルを選んだ。その結果、若齢では、個体位置、競争指標、直径が、その一方、高齢では斜面傾斜のみが年輪幅成長に影響を及ぼした。若齢時には好立地で個体間競争が少ない個体が成長し、高齢時は乾燥地に生える個体の成長が良いことが示唆された。