| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-215 (Poster presentation)
日本で絶滅危惧種に指定されている草本植物には大陸、特に温帯草原を起源とする種や分類群がみられる。発表者らは黄土高原(中国河北省張家口市蔚県)における先行研究で、本邦の絶滅危惧種であるハマビシ(Tribulus terrestris:環境省絶滅危惧ⅠB類(EN))やオナモミ(Xanthium strumarium:環境省絶滅危惧Ⅱ類(VU))が現地では湿地周辺の荒地等に普通種として生育していることを確認した(大窪ほか2019)。これらの希少種を含む群落の大陸での組成や構造、立地条件に関する知見を収集し、日本における同種や近縁種群落との比較研究を進めることは植生学や保全生態学上、重要と考えられる。そこで本研究では、2019年夏季に黄土高原(蔚県・山西省大同)において、日本では減少や絶滅が危惧される希少種および近縁種を含む草本群落について植物社会学的植生調査を実施し、群落の組成および構造を明らかにすることとした。調査地は標高約900mの盆地底部から約1800mの山岳草原の複数箇所で、調査面積が1㎡の調査枠は計35プロットが設定された。
ハマビシが生育する群落は盆地底部の荒地で確認され、植被率は25%と低く、アブラヨモギ(Artemisia ordosica)やエノコログサ属、スベリヒユ(Portulaca oleracea)、アカザ属等から構成された。周辺にはオナモミやカワラサイコ(地方版絶滅危惧種指定多数)が生育していた。ハマビシは日本では海浜植生の砂浜で生育する種であるが、黄土高原でも貧栄養の砂土で塩類が析出したアルカリ土壌で群落が確認された。またヒゴタイ属の1種を含む群落は植被率100%で、本種の優占度は高く、ミシマサイコ(Bupleurum scorzoneraefolium var. stenophyllum:絶滅危惧Ⅱ類(VU))等、多くの草原性植物から構成された。