| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-218 (Poster presentation)
花粉分析は、堆積物に含まれる花粉化石群集をもとに過去の植生を復元する手法である。しかし、分類群ごとに花粉の生産量や飛散性が異なるため、分析結果の定量的な解釈が難しい。本研究では、カナダ・Wood Buffalo National Park(WBNP)での過去100年にわたる植生変化の定量的な復元を、Landscape Reconstruction Algorithm (LRA; Sugita 2007a, b)を用いて目指す。LRAの主変数として、各分類群の花粉生産量と花粉落下速度が含まれる。2019年には、当地域の主要樹種Pinus banksianaの花粉生産量を推定した。
単位面積あたりの年間花粉生産量は、雄花あたりの花粉数にリタートラップ法により得られた年間雄花落下数を乗じて求めた(齋藤 2012)。2019年6月にWBNPに近いフォートスミス周辺で開葯前の雄花試料を採取した。これについて、雄花あたり雄蕊数および雄蕊あたり花粉数を計数し、両者を乗じて雄花あたり花粉数を求めた。年間雄花落下数は、WBNP内にある長期観察プロットでの10年以上にわたるリターフォール調査の測定値(Kurachi et al. 2019)から推定した。20—180年生の5林分で得られた雄花生産量データを、開花後の雄花の平均乾重を用いて雄花落下数に換算した。
その結果、Pinus banksianaの雄花あたり花粉数は3.3×105粒、年間雄花落下数は1.74×107個・ha-1・year-1、年間花粉生産量は5.79×1012粒・ha-1・year-1となった。これは、京都府旧京北町のアカマツ林(齋藤2012)、九州大学北海道演習林のチョウセンゴヨウ人工林(高原ほか未発表)および欧州でのマツ属(Sugita et al. 2010)と同等の花粉生産量である。今後、Picea marianaやP. glaucaなどについても花粉生産量の推定を進める。