| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-220 (Poster presentation)
気候変動下で台風の発生頻度や強度が増加すると予想されている。風倒被害を低減する対策と同時に、風倒後のレジリエンスを高める施業方法の探索が必要である。そこで本研究では、風倒後の地上部バイオマスの回復過程をシミュレーションし、気候変動下でも高いレジリエンスが期待できる管理方法を探索することを目的とした。
北海道渡島檜山森林計画区の国有林全域 (北緯42度27分, 東経139度51分,標高0-1300 m、総面積348 km2) を対象に、2016年8月下旬に相次いで上陸した台風7号、11号、10号による風倒が発生した林分で、2055年までの地上部バイオマスの回復過程をシミュレーションした。風倒前の樹種、樹齢、材積(初期空間分布)は国有林森林簿から設定し、更新阻害要因となるササの空間分布は森林簿の立木密度から推定した。1) 倒木の処理方法、2) 植栽する樹種の組み合わせで3つの施業ケースを設定した。将来気候は、農研機構が統計的ダウンスケーリングを施したMRI-CGCM3モデルのRCP2.6と8.5シナリオ、さらに現在気候が継続する場合の3ケースを想定した。風倒後の地上部バイオマスの回復過程は森林景観モデルのLANDIS-IIで、月別かつ10m解像度のグリッド別にシミュレーションした。風倒前と2055年の樹種別の地上部バイオマス量と組成を比較した。
地上部バイオマスの回復量は、風倒後に倒木を撤去し温暖化適応樹種のスギを植林したケースで最大だったが、倒木を撤去したのちに風倒前と同じ樹種を植林したケースとの違いは軽微だった。気候変動の影響は高標高地域で見られ、特にRCP2.6シナリオ下で遷移初期種のカンバの回復量が高いことが示された。これらの結果から、気候変動下で風倒後のバイオマス回復量を高める森林管理方法について、風倒前の森林タイプ別に議論した。