| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-224 (Poster presentation)
生態系管理や土地改変の結果として様々な生態系サービスの供給量が変化し得る。生態系サービス間の関係性は、生態系サービスAとBが共に増加(または共に減少)する場合はシナジー、Aが増加しBが減少する場合にはトレードオフの関係にあるといえる。生態系サービスの多面的な供給量を最大化するためには、これらの関係性を生み出す要因を明らかにし、トレードオフを避け、シナジーを促進する必要がある。本研究では、重要な生態系サービス供給源である森林に着目し、森林の改変がもたらす各種生態系サービスの変化を数値モデルにより定量化することで、トレードオフ・シナジーを生み出す要因を明らかにすることを目的とした。
対象は調整サービスとして水質、文化サービスとして野外学習、登山、キャンプの計4サービスとした。日本全国の二次メッシュ(約10km格子)について、各サービスの供給量を自然・社会環境変数の空間分布から予測するモデルを作成した。そして、モデル上で森林率、自然林比率、原生林比率の3つの変数を変化させた時の各サービスの変化量をメッシュ毎に算出した。サービス変化パターンが似通ったメッシュをクラスター分析により抽出し、それぞれのクラスターに特徴的な自然・社会環境要因を求めた。
森林率の10%の減少は、標高が高く人口密度の低いメッシュで水質の低下と野外学習・登山・キャンプの増加をもたらした(調整・文化サービス間のトレードオフ)。一方、標高が低く人口密度の高いメッシュではいずれのサービスも減少傾向だった(調整・文化サービス間の負のシナジー)。同様に、自然林・原生林比率の10%減少においても、標高などの違いによりトレードオフからシナジーへのサービス間の関係性の変化がみられた。
本研究は、森林改変は生態系サービス変化を生み出す要因であるが、その変化の方向とサービス間の関係性は標高や人口密度などに依存して変化し得ることを示した。