| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-230  (Poster presentation)

サロベツ泥炭採掘跡地に移植されたミズゴケマットの2年間の定着状況
Establishment of peat-moss carpets transplanted in a post-mined peatland, Sarobetsu mire for two years

*露崎史朗(北大・院地球環境), 梅村昌宏(北大・院環境), 賈雨萌(北大・院環境)
*Shiro TSUYUZAKI(GSEES, HU), Masahiro UMEMURA(GSES, HU), Yumeng JIA(GSES, HU)

  ミズゴケ泥炭湿原は、生物多様性保持・炭素貯蔵源として機能する一方で、世界的に減少の一途を辿っている。そこで、北海道北部サロベツ湿原ミズゴケ泥炭採掘跡地において、周囲から採取したミズゴケマット移植による湿原復元の可能性を調べた。採掘後の遷移は、裸地(BG)にミカヅキグサ草地(RA)が侵入し、ヌマガヤ草地(MJ)に移行する。MJではミズゴケの定着の認められる地域もある(SP)。ここでは、ミズゴケ移植から、これまでの2年間の結果を報告する。
  1972年採掘跡地において4植生(BG, RA, MJ, SP)に、それぞれ50 cm × 50 cmの実験区を20個設置し、4隅に16 cm × 12 cmの移植区を設け、2017年秋と2018年春に移植を行った。ミズゴケ移植のみを行った区に加え、ミズゴケ上にミカヅキグサかヌマガヤリターのマルチ処理を行った区も作成した。環境については、光・温度・泥炭水分量・泥炭水水質・リター・水位を測定した。垂直成長(クランプ法)、頭状体数、NDVIを測定しミズゴケの成長量を非破壊的に推定した。2018年、2019年秋に移植区内のミズゴケを刈り取り、バイオマスを測定した。
  移植ミズゴケは、BGでは2018年中にほぼ死滅した。RAでは若干が2019年秋まで生存していたが成長は極めて不良な実験区が多かった。MJでは様々な成長パターンが認められた。SPでは衰退もあるが概ね良好な定着が確認できた。リターマルチは、光の減少と温度低下の効果が認められたが、ミズゴケ定着・成長への効果は明瞭ではなかった。pHは、植被の増加につれ高くなったが、いずれも4.5以下であり、pHによるミズゴケの定着と成長への影響は軽微と判断できた。水位は植被の発達につれ低下する傾向にあった。泥炭水分についもて、植被発達につれ低下する傾向にあった。以上のことから、ミズゴケ移植による湿原再生のためには、リターマルチは、それほど重要ではなく、裸地に直接移植を行うよりも、RAあるいはMJ草地形成後に行うことが効果的であることが示された。


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