| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-231 (Poster presentation)
Artemisia adamsiiはキク科の多年生草本で、家畜の採食嗜好性が低いため、モンゴル国では草原劣化の指標植物として認識されている。モンゴル草原の適切な管理と保全に資するため、本種の発芽特性およびその枯死残渣による発芽の自己阻害を調べ、それらの本種の防除への応用可能性と、草原の植生遷移への関与を検討した。異なる光および温度条件下で発芽を試験した後、A. adamsiiの枯死残渣を含むもしくは含まない培地においてA. adamsiiと主要な草原構成種4種の発芽を試験した。その結果、A. adamsiiの発芽は光を必要とし、強い温度依存性を示した。A. adamsiiの枯死残渣はA. adamsiiの発芽を強く阻害したものの、残渣を含まない培地に移植すると発芽を開始した。他の草原構成種の発芽に対するA. adamsii枯死残渣の影響は小さく、近縁種であるA. frigidaを除くと阻害はほとんど見られなかった。以上から、A. adamsiiにおける発芽の自己阻害は致死性ではなく、防除への有用性は低いと考えられた。しかし発芽に適した条件が限られており、環境操作を通した発芽抑制を期待することができる。A. adamsiiの残渣は選択的にA. adamsii自身の発芽を強く阻害することで、A. adamsiiが優占する劣化草原において、A. adamsiiから他種への植生遷移を促しているかもしれない。