| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-233 (Poster presentation)
ナラ類集団枯損(ナラ枯れ)による被害は、被害材積こそ2010年度以降減少しているものの、被害地域は拡大を続けている。被害跡地の管理や、被害防除の優先順位づけのためには、どのような森林では被害後の更新が比較的容易か、それとも困難か、といった情報が必要となる。本発表では、発表者らがこれまでに調査したナラ枯れ後の森林のデータと、既往文献で公表されているデータから、ナラ枯れ跡地の更新についていくつかの類型にまとめて整理することを試みた。
その結果、(1)依然としてナラ林が維持されると見込まれる場合、(2)ナラ枯死によるギャップに、亜高木層・低木層からの更新が見込まれる場合、(3)下層植生による更新阻害が懸念される場合、(4)シカによる影響が懸念される場合の4パターンがあると考えられた。(2)には気候条件などにより、(2-a)落葉広葉樹による更新が見込まれる場合、(2-b)常緑広葉樹による更新が見込まれる場合があった。(4)では、シカの採食圧による更新阻害が懸念される場合のほか、シカの不嗜好性樹種のみが更新して、特異な樹種構成となることが懸念される場合があった。
これらのことから、密な林床植生が発達している森林や、シカ密度の高い森林ではナラ枯れの予防がとくに重要になると考えられた。