| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-234  (Poster presentation)

広島県本郷川河口域における塩生植物群落の出水による分布変化
Temporal change in the distribution of halophyte communities by flood disturbance at the Hongo River estuary, Hiroshima Prefecture

*岡浩平(広島工業大学)
*Kohei OKA(Hiroshima Inst. Tech.)

 塩生植物は、波あたりが弱く、干潮時に露出する特殊な立地に生育し、河口干潟を主な生育地としている。このような立地は開発の影響を受けやすいことから、塩生植物は環境省のレッドリストの記載種も多く、絶滅の危険性が高い種群の一つと考えられている。河口干潟は、平常時は干満時の波の影響を受け、出水時は大きく地形が変化することから、攪乱の影響を受けやすい立地と考えられる。ここ最近は、日本各地で豪雨災害が頻発しており、河口干潟が受ける攪乱の規模や頻度が高まっている可能性がある。塩生植物は、攪乱への耐性が備わっていると考えられるが、今後も豪雨災害が頻発するようであれば、生育地がさらに減少する危険がある。そこで、本研究は、2018年7月に発生した西日本豪雨災害の影響を受けた河口干潟の前後を比較して、出水が塩生植物の分布に与える影響を明らかにすることを目的とした。
 対象地は、広島県松永湾の本郷川河口干潟の河口から約500mの範囲とした。調査は、2017~2019年に実施した。まず、対象地の塩生植物群落の分布を把握するために、小型UAVによる画像をもとに、QGISを用いて植生図を作成した。また、河川内の護岸から河道にむけて、5本の調査測線を設けて、1m×1m方形区を連続して設置し、方形区内に出現した各種の個体数、被度と草丈を記録した。
 出水前後の群落面積を比較すると、多年草のヨシとナガミノオニシバは、群落面積がほとんど変化しなかった。一方、1年草のハママツナとヒロハマツナは、出水後に群落面積が大幅に減少したが、翌年にはほぼ同面積まで回復した。2年草のハマサジとフクドは、出水後に群落面積が減少したままで、翌年にほとんど回復しなかった。これらの結果より、出水時の群落の減少とその後の回復は、塩生植物の生活史によって異なることがわかった。


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