| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-235  (Poster presentation)

ヒノキ人工林における下層植生の動態に及ぼす列状間伐および採食圧の影響
Effects of line-thinning and browsing pressure on dynamics of undergrowth in a planted Japanese cypress (Chamaecyparis obtusa) forest

*渡邉仁志, 片桐奈々, 大洞智宏(岐阜県森林研究所)
*Hitoshi WATANABE, Nana KATAGIRI, Tomohiro OBORA(Gifu Pref. Res. Inst. for For.)

ヒノキには,壮齢以降の林分の過密化に伴って下層植生が衰退し,表土流亡が発生しやすくなるという森林管理上の問題がある。さらに,近年はニホンジカによる森林植生の過採食が深刻な問題となっている。本研究は下層植生の回復を目的として,岐阜県養老町の52年生ヒノキ林分(標高580m,南東向き斜面,平均傾斜35度)において,2015年2月~3月に2伐4または5残の列状間伐(材積間伐率37%)を行い,ニホンジカ影響下における下層植生の動態を継続調査した。
伐採列の有無とシカ柵(H=2m)の有無により調査地を4条件に分け,各々2反復の調査区に各6個の小方形区(1m2/個)を設定した。調査項目は,間伐直後と1~5成長期後における下層植生の種組成および植被率とした。
間伐直後の下層植生の植被率(平均値)は,どの条件でも1%以下であった。柵あり区の伐採列における植被率は,年の経過とともに増加し,5成長期後には47.8%になった。一方,柵あり区の残存列および柵なし区の植被率は,調査期間を通じ微増または横ばいであった。初期に観察された種は,アカメガシワ,カラスザンショウ,キイチゴ属sppで,先駆樹種の新規実生が多かった。一方,最終年にはこれらの植被率が低下し,コアジサイ,シロモジ,リョウブ,シダ類が増加した。植生回復(5成長期後と設定時の植被率の差)に対する伐採列とシカ柵の影響をみるため,二元配置分散分析を行ったところ,交互作用が有意であった。全群で多重比較を行ったところ,柵なし区では伐採列の有無が植生回復に影響していなかったのに対し,柵あり区では伐採列の方が残存列より植生回復の程度が大きかった。このことから,列状間伐を行うことにより,伐採列で光条件の改善による植生回復の効果がみられるものの,シカの採食圧による植生回復への負の影響が大きいことが示唆された。


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