| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-236 (Poster presentation)
Janzen-Connell(J-C)仮説は森林の種多様性維持メカニズムを、病原菌などの天敵による同種からの距離 (密度)存的な実生の死亡(CDD)から説明する。しかし、J-C仮説の成立要件である「成木近傍で同種が死亡し他種が生き残る」、といった樹種の置き換わり(RE)についてはほとんど検証されてこなかった。近年、距離・密度依存的死亡率(CDD)はアーバスキュラー菌根菌(AM)と共生する樹種では高く、外生菌根菌(EM)と共生する樹種では病原菌からの防御機構が働き低くなることが指摘されている。しかし、菌根菌タイプが樹種の置き換わり(RE)に及ぼす影響は明らかではない。また、光環境がCDDやREにどう影響するのかも未解明である。
本研究は次の3点を明らかにすることを目的とした。1)菌根菌タイプはCDDに関係しているか? 2)菌根菌タイプはREに影響しているのか? 3) 光条件によってCDD, REは変化するか?
東北大学フィールドセンター二次林で、AM種(ウワミズザクラ、ミズキ、イタヤカエデ)、EM種(ブナ、ミズナラ)を対象に交互播種試験をギャップ区・林内区で行い、実生の生存率・個体重を測定しCDDを評価した。樹種の置き換わり効果は、成木下における同種と他種の測定値の自然対数比(RE指数)で評価した。
暗い林内ではAM種がEM種より距離依存的死亡率が高く、置き換わりもおきやすい事がわかった。ただ、ギャップ区では無関係となり、光環境の好転により病原菌の働きが抑えられ、逆に菌根菌の働きが強くなったためだと考えられた。 本研究は同種の距離依存効果(CDD)だけでなく樹種の置き換わり効果(RE)も、森林での樹木種の共存メカニズムに大きな影響を与えていることを示唆している。