| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-237 (Poster presentation)
ニホンジカによる剥皮は、樹種選好性とともにサイズ依存性があることが既往研究で示されている。亜高山帯針葉樹林は前生稚樹による豊富な稚樹バンク形成が特徴的であるが、同じサイズであっても、林床で待機している稚樹(待機稚樹)と順調に成長した稚樹(更新稚樹)が同時に生育している。これらは森林動態上は異なる意味を持つが、ニホンジカの剥皮の影響の違いは明らかにされていない。富士山北面の標高2100mにおける亜高山帯針葉樹林において、稚樹の更新時期の違いがニホンジカの剥皮に及ぼす影響について明らかにした。1999年に、50×140mの調査区を設定し、樹高2m以上の立木を対象に胸高周囲長の計測とニホンジカによる剥皮を調査した。その後、2007年、2012年、2017年に再計測を実施し、その調査結果を解析した。林冠木は、オオシラビソ、シラビソ、コメツガで構成されており、剥皮本数はシラビソが最も多かった。更新稚樹の方が待機稚樹よりも剥皮されていたが、それらの生存率に有意な違いは見られなかった。上層木からの被陰の影響が弱く、将来的な林冠木への成長が期待される更新稚樹の生存率がニホンジカの剥皮により低下していることにより、この林分の更新が阻害されていることが示唆された。